ののさまとウメちゃん
“今日もウメちゃんはお給食ぜんぶたべました。
あと、ぜんぶがんばりました。
ウメちゃんもおもちくんも今日も元気でありがとうございます。
寒いからののさまも風邪ひかないようしてください。
じゃあまたね。”
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ウメちゃんの通う幼稚園は大きなお寺さんだ。
幼稚園の入口の傍らにはお寺の門があり、その先にはののさまのいらっしゃる境内がある。
降園の際、門の前で手を合わせてののさまにご挨拶するのが日課になった。
もうすぐ、1年。
最初は無邪気におおきな声で意気揚々としていたこの日課。
通り過ぎる他の父兄や、お寺へ来る地元の方に「まあなんてかわいい」と笑いかけてもらうことも。
でもウメちゃんはそれがちょっぴり恥ずかしくなったみたい。
だんだん、ご挨拶を渋るようになった。
特に同年代のこどもたちにみられるのは抵抗があるようだ。
もちろん。
その気持ち、わかる。
ののさまも、きっとわかってる。
「でもさ。今日はご挨拶してくれないんだなあって、ちょっぴりさみしいかもね。心の中でだけ、ご挨拶しといたら?」
なんて話をしたら
ウメちゃん、この間、友達と帰る道すがら、ちょこっとだけ境内のほうを振り向いて腰の辺りでバイバイと手を振っていた。
ののさま、ふふふと笑ってくれたろうか。
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先日、うめちゃんの描いたののさまの絵が、県の佛教幼稚園画展への出展作品に選ばれて表彰していただいた。
絵が大好きなうめちゃんは、本当にほんとうに嬉しかったようだ。
生まれてはじめてもらった表彰状。素敵な額を買って、“虹の赤ちゃん”(サンキャッチャーのつくる模様をウメちゃんはそう呼ぶ)が集まる壁に飾ろう。
ウメちゃんの描いたののさまは、少しこうべをたれて、ちゃんと半眼、合掌されていて、とても優しそうだ。
ウメちゃんとののさまは“通いあってる”んじゃないかなとこの絵をみて感じた。
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ウメちゃんのごあいさつの後ろで、わたしもいつも手を合わせて目を瞑る。
想うことはいつも同じだ。
このこたちをわたしに預けてくださってありがとうございます。健やかに育てられますよう。ただ、ただ、健やかでありますよう。
画展にいらっしゃったののさま像がとっても素敵でした。