ありたいすがたと大事のきもち
数日ぶりに外出をした。
ウメちゃんは大張り切りで身支度を整える。
大きな鞄になにやらとたくさんのモノを詰め込んでいる。
そんなにいるかい?
やきもきするけど、野暮かなと思い口を紡ぐ。
荷造り楽しいんだよね。
(私はキライダケド!)
・
車で1時間足らずの実家まで顔を出しに行き
そのまま久しぶりの場所まで足を伸ばすことにした。
大好きなあの人のおでんを食べに。
ウメちゃんにその旨を伝えたら、ニコニコと頷いた。そして、鞄の中身をみせながらいった。
「おもちくんが退屈してうるさくしちゃったら、ウメちゃんがみててあげるから、ママはお友達とお話してね。久しぶりでしょ?」
鞄の中身をみてビックリ。
パンパンにふくらんだその中身は、全て弟の玩具だったのだ。
・
ウメちゃんは優しい。
というか、気遣い屋で世話好きだ。
昔は…といってもまだ4年弱しか生きていない彼女なんだけど…そう、去年くらいまではここまでではなかった。
2歳くらいまで、つまりおもちが生まれて「姉」になる前は、かなりの自由人でどちらかというと破天荒なキャラクターだった。
ここ1年で激的に“気遣い女子”になったのは、幼稚園の先生の影響がかなり大きい。
小柄で色の白いキリッとした美人で、ハキハキしてしっかり者で…
つまり、つまり。母(私のことね)とは正反対のデキル女性に、ウメちゃんはすっかりと憧れてい
る。
目指すところ、つまり「ありたいすがた」が定まると、人ってとてもイキイキするんだなあと、ウメちゃんの姿を見ているとしみじみ。
・
一方で、不安になったりも、する。
ウメちゃんは多分、家のなか、とくに私に対して1番優しい。(んじゃ、ないかなあ。)
もちろん4歳児らしく感情を爆発させることだって、駄々をこねることだってたまにはある。けど、「たまに。」
それって…果していいことなんだろうか?
幼稚園に迎えにいったときに遠くから眺めるウメちゃんの姿は年相応に幼くて、ドキッとする。
ウメちゃん、家で寛げているのかなあ。
ウメちゃんの気遣いや世話好きが、「愛されるための努力」だったら切ないなあ。
もんやりと、また考え込んでしまう。
・
それでもやっぱり、ウメさんの気持ちは純粋に嬉しかった。
鞄に詰まった玩具たちは、ウメちゃんの「ママとおもちが大事」のきもちだ。
大事。
それは、ウメちゃんの頭のなかに、ちゃんと、私とおもちが入ってるってことだ。
誰か、自分以外の存在の、幸せのことが。
「自分が誰かから大事にして貰えているか」
よりも
「自分が誰かを大事にできているか」
を胸に据えて生きたほうが、ずっとずっと、ずーっと、豊かで幸せ。
つい前者の考え方をしてしまいそうになる自分は、ハッとする。
ウメちゃんと私って全然似てないの。
面白いくらい。
でもお互いさ
誰かから認められるために
なんかじゃなくてさ
自分の「ありたいすがた」を体現して
自分が大事だと思えるものをちゃんと大事にして
楽しく生きていこうね。
・
今日はうめちゃんのお気遣いのおかげで、好きな人と沢山お話出来ていい日だった。
おでん、美味しかった。
初めて出会った日と同じ帽子を被っていた。
彼女も私の「ありたいすがた」のひとつ。