てっても ふっても

絵と本と珈琲が好きなポンコツかあちゃん。娘ウメちゃん 息子おもち とのプカプカな毎日 その考察。

つめたいあたたかい

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ウメちゃんとおもちくんが続けて熱をだした。

2日間、ウメちゃんとおもちくんと3人で引きこもっていた私です。


ツ、ツ、ツラカッタ…!


けんか
とめる
けんか
とめる

の無限ループ。


とはいっても我が家の場合
ケンカ両成敗ではなく
ウメちゃんがおもちの暴挙の一方的な犠牲になるという構図だ。

思うようにならないと物を投げて訴えるようになったおもちくん。
それも、なかなかの豪速球。

危ないし、繊細なつくりのおもちゃなんかどんどん壊れてしまう。

「…まあ、これおもちちゃんにあげようと思ってたからいいんだけどね。」

どんどん諦めがよくなっていくウメちゃん。

切ない。

これは許せない!と強く叱ると
おもちは「うえーん」とわざと(!)
“赤ちゃんらしい”泣き方
でウメちゃんの胸の中に飛び込む。


母性を刺激されて、ウメちゃんはなんでも許してしまう。


やれやれ だ。


2日間で何十回この茶番劇を繰り返したことか。



めをみて、短く、繰り返して伝える
とか
やらかす前にとめて、やらなかったことを褒める
とか
気持ちを代弁する

とかとか。


ききかじった対応を試し
またおなじことをしでかし
また試し。


嗚呼…!無限ループ!!!!




熱を下げるためにも眠ってほしいけれど
非日常な感じに妙に興奮してなかなか眠れない様子だ。(きもちわかる)

やっとうとうとしはじめたウメちゃんと
先に高いびきのおもちの間に挟まって

わたしも一眠り、と思ったそのとき
枕元に置いたスマホが震えた。

今月受ける予定の
おもちくんの発達相談の担当の保健師さんからの連絡だった。



「担当をさせていただく○○と申します。
おもちくん、その後いかがですか。」



スマホの向こうの
抑揚のない、静かな、穏やかな声。



いや、正確にいうと“穏やかさを努めた声”だ。



ああ、この声は、聞き覚えがある、と私は思う。


あれは、ウメちゃんの新生児訪問にきた保健師さん。

はたまた、ウメちゃんの1歳半検診の面接をした…

または3歳児検診をした…

もしくはこの間おもちくんの面接をした…



そう。

つまり私の住む市の検診を担う保健師さんたちみーんなこの喋り方!




なるほどなあ、と思う。


センシティブなお仕事だものね。

介入しすぎず、冷静に相手のサインを逃さず、的確に必要機関に繋ぐ。
そんな“心得”が背景に浮かび上がってみえる。

電話口の彼女もフローチャートのようなものをみながら話しているんだろうか。

そうだ、なんだか人と話している感じがしないのだ。

私は目の前のひとと話しているつもりなのに、相手はフローチャートと話している。


なにかに「努める」人。
(この場合、抑揚なく穏やかに話すことを努める人。)
その根源に“愛”が感じられないと、息が出来ないような気持ちになってしまう。
道端に投げ捨てられた魚。 パクパクと。



4年前、ウメちゃんの新生児訪問。

保健師さんのこの「冷たい穏やかさ」と一定の距離感を死守しようとしている気配に無性に心が沈んだ。


隅にホコリが溜まったフローリングや
つみかさなった産着。
みとがめられているきがした。

“まあなんてだらしないははおやなんでしょう。”



実はその日が新生児訪問の日だというのを、わたしはすっぽり忘れていたのだ!

いまなら、「やだーごめんなさい今日でしたよね。すっぽぬけててお掃除もしてませんでしたーはずかしいー!散らかってますけどお上がりくださいー」くらいの愛嬌はふりまける。

でもそのときは母親たるものが新生児訪問を忘れていたなんて口が裂けてもイエナイ!と思い込んでいた。



沈み続ける心のまま
とにかく「ワタシハダイジョウブデス」とアピールしてはやく帰ってもらった。

彼女が帰ってから小さなウメちゃんを抱いて
私はさめざめと泣いてしまった。


…いやあ、産後でナイーブだった。




彼女(保健師さん)は職務を全うされているだけで何も悪くなかったのにな。




そんなこんなで、おもちくんのときは新生児訪問はお断りしよう、と密かに心に誓っていた。

しかし幸運なことに、おもちをとりあげてくれたベテランの産婆さん(…で言い方は今しないのか。私は敬意を込めてこう呼びたい。)が来てくれることになったので、喜んでお願いした。

彼女はわざわざ違う市にある私の実家まで来てくれて、細かいわからないことや困り事などに、長年の経験からくる「こうしてみたらいいかも」を沢山授けてくれた。

わたしも実母も産婆さんが帰ったあとなんだか顔が緩んでいて、その夜は久しぶりに少しまとまって眠ることが出来たのを覚えている。


そういえば
その産婆さんもいつも淡々と静かにお話をされる。

常にニコニコとしている、というわけでもないし、お世話焼きな感じもない。

だけど、その穏やかさはいつもほんのりとちょうどよく「暖かい」。

一体何が違うんだろうな。




「冷たい穏やかさ」 と「暖かい穏やかさ」






でもね。


その違いは個人的な性格や資質のせいでは
きっとない。


例えば、おもちくんが今度受ける発達相談と検査には、40分程要するらしい。

その時間の予約がとれたのは、3ヶ月以上先の日付だった。

つまりそれだけ、その相談と検査を必要としている(ということになった)こどもたちが沢山いる。


小さなこどもの検査だ。
首尾よく進むとは限らない。
親だって色々と相談したいこと、きいてほしいことを溜めてやってくる。
そして、どうしたってどこか、人の言葉にナイーブになっている。

そんな親子たちをスケジュール通りに捌くには
やはり保健師さんたちがあの淡々とした距離感とペースを貫くのは必然なのだろう と思うのだ。



お疲れ様だなあ。



くだんの「暖かい穏やかさ」の産婆さん。
自分の助産院をひらくまで、長年大きな病院に務めてらしたそうだ。

その時の彼女はきっと今と全然違ったんじゃないかな。

そして、その経験の全てが、あの「暖かな穏やかさ」に繋がっているんだろうな、と思うのだ。




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お疲れ様だなあ。


と、電話をきったあと、心が沈みかけた私は、その暗雲を振り払うように、口に出して呟いてみた。


わたしも、保健師さんも、お疲れ様だなあ。



「なにがお疲れ様なの?」


いつのまにか起きてじっと電話の会話に耳をそばだてていたウメちゃんがきく。

「誰とお話していたの?おもちちゃんがどうしたの?」

発達相談に関してなんと説明すべきか、うーんと言い淀んでいる私を励ますように
そしてどこか怒っているかのように
ウメちゃんは言葉を必死に重ねた。


「おもちちゃん、お話できるよ!

アーパー とかさ
プー とかさ
マッティー とかさ。

いっぱい言うよ。

それにさ!笑うと可愛いもん!

可愛いから大丈夫だよ!」




ふふっ
“可愛いから大丈夫”か。
思わず吹き出した。

それ最強だね。

家族にしか通じない「おもち語」を誇らしげに並べたてるウメちゃん。

あなたもね、お疲れ様。

“おねえちゃん”やってるってどんな気持ちなんだろう。
私には一生経験し得ないこと。
あなたはすごい。


大丈夫か
という話ならもちろん答えはイエスだ。


これは逃げるためのダイジョウブデスじゃない。


おもちも、うめちゃんも。きっと、私も。

大丈夫。





どんなところにも、暖かさと“お疲れ様”をみつけられる自分でありますよう。

つまり、強くなりたい。

しなやかに、強く。


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後日談。


またへそをまげ、プラスチックの目覚まし時計をふり上げて床に叩きつけようとしたおもちくん。


すかさず駆け寄り


「あっ、おもちくんママに時計とってくれたの?!ありがとーーーー♡♡今探してたの!ママ嬉しい!」とニッコリ作戦。


おもちくん、ニヤニヤと時計を優しく手渡し、その後も何十個もおもちゃを私の膝の上に運んでくれたのでした。


「ありがとう」



と言う度にキメ顔からのターン。
からの肩ポンポン。



さっきトイレから出てきたら、私に渡すためのおもちゃを両手いっぱいに抱えてキリッとした顔でドアの前に立ってた!ちなみにとっくりセーター来て、下半身はフルチン。



うん、この子はほんと、大丈夫。




おもしろいもん。