てっても ふっても

絵と本と珈琲が好きなポンコツかあちゃん。娘ウメちゃん 息子おもち とのプカプカな毎日 その考察。

12月30日



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あの頃ひたすらプラプラした街を

あの頃みたいにプラプラしてみました。


ヨリミチ マワリミチして辿り着いたおめあてのお店。

選りすぐりの絵本とおもちゃを扱う『貝の小鳥さん』は、もう年末の休みに入ったとシャッターに貼られた紙切れの優しい文字が教えてくれました。

そうかそうか。

敢えて営業日は調べてはこなかったのです。また、来ます。



Uターンしてまたプラプラ。

目白から池袋までは歩いても拍子抜けするほど近いのです。


小さなハンディカメラで、耳の中に豆が入ってしまう若い女性が出てくる映画(ナンノコッチャ)を撮影させてもらった小さなカフェも

たまご色と水色のコントラストが惚けたような柔らかいシャツを買った古着屋も

もうみんななくなってしまったようで

フェンスに絡まる蔦だけが、あのときと変わらない様子でモウモウと茂っています。


明日館も閉まっているわね やっぱりね

と横目でみながら通り過ぎて、大きな高架下を潜り通る。


天狼院書店に行ってみたいなあと思ってたけど、それもまた「こんどのおたのしみ」にして

聳え立つジュンク堂書店のビルに入ります。


2時間ではワンフロアも制覇できないのだけど、運命を勝手に感じては棚に戻したり、いややっぱり‥と引き出したりしながら、2冊を選び会計を済ましました。


さあそろそろ日が暮れてきました。


再びプラプラと高架下を潜り返し、賑やかしい駅前で友と落ち合いました。


“髪切った?”

“あーかなり前にね!むしろ伸びたよ。”


1年に1回程度の間隔で会う彼女と、もはやお決まりになりつつある会話を交わしながらひょいと入ったバルで

それぞれ2杯ずつ スペインビールを飲みます。

タコやらジャガイモやらピクルスも食べちゃいます。美味。



“今日はね

1日この辺を当てもなくプラプラしていたんだよ。

こうしてみると 昨日も一昨日もこうしてたんじゃないかなってくらい

私あの頃と全然変わってないなあってシミジミしちゃったの”


私は友にそう告げる。


「あーそれなんだか安心しちゃう」

と微笑んだ彼女もまた、変わらない自分にシミジミとすることが多々ある最近みたいです。




いつもワイワイと子どもたちに囲まれて、行きたいところにも思うように行けないもんだから、たまの一人時間はつい、予定を欲張って詰め込んでしまいがちなのですが


今日は無計画に、気ままに

ひとりきりで時間を過ごしたかったのです。


プラプラと  あの頃のように。


来る日も来る日も

あてもなくうろついていたあの頃のように。



ずっと、わいわいと仲間に囲まれてるような人に憧れていたのに(イマダッテ!)


今日、ビルの隙間から入ってくる日差しを瞼に当てながら、しみじみ

「あー、いま、“私”だあ」

って思ってしまったんだ。


ひとりでプラプラと歩きながら

妄想の世界とゲンジツを行き来しながら

やがて えい とゲンジツ百パーセントになって友人との逢瀬に向かう私。


こんな感じが結局、「らしい」んだよなあ。


ちょっと不本意な「らしい」と

しょうがねぇな なんて苦笑いでもするように握手して、仲良くやっていきますかと受け入れることが


オトナになるってこと

なのかもしれない。





友人と改札で別れるまで無茶苦茶に饒舌りながら帰路につく。

彼女とも気がつけば20年近い付き合いになります。

「ガンバッテ」関係を継続したつもりもなく

(そういう「ガンバリ」はだいたい徒労に終わることもようやくわかってきましたよ)

しょっちゅう連絡をし合うわけでもなく

でもこうやってムショウに会って話したくなる人がいるというのは、幸福。



上野駅で乗り換える途中に、はっと「今年やり残したこと」に出会ってしまい動揺しました。


もうオットに帰路についたと連絡してしまった。諦めるか?

いや、イケルイケル!


私は小走りに目の前の小さなアイリッシュパブの木戸を開けました。


お目当はそう

ハーフパイントの、ギネスビール!


心の中で舌舐めずりをしながら、ゆっくりと丁寧に注がれたソレを両手で受け取ります。


ああ、このコク。

優しく滑り込んでくる泡!


これがね、今年どうしても飲みたかったのよ。トキドキ。ムショウニ。


まるで命水のように私に染み渡る黒茶色のなめらかな飲み物。

これってちゃんと“フィッシュ&チップス”が食べたくなるから不思議ね。

でもそれはさすがに我慢して

本日3度目の「またこんどのおたのしみ」




足早に乗り換える間に、頰は夜風に撫でられて酔いはすぐに醒めてしまいました。 


プラプラと歩いた街も、友の微笑も、喉を滑り落ちていった泡も、なんだか夢だったみたいだな。




12月30日。

私が1年で1番好きな日の お話でした。